パリとニューヨークで思考する

長年NYに暮らし、パリに住み、日本に戻ったアーティストの忘備録。

映画「ボヘミアン•ラプソディ 」レビュー

ニューヨークでは11月1日からQueenの映画「ボヘミアン•ラプソディ」が公開され、見に行ってきました。私はQueenファンなので、この日を何年も待っていた!フレディ•マーキュリーの人生が、正しく描写されているだろうか?とドキドキ。

トレイラー映像が何本も公開されていたので、映画の雰囲気は、ある程度分かってました。

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始まっていきなり!Live Aid出演前のシーンで、通路にデビッド•ボウイらしき人物が見える。しかしうまい具合にカメラで顔が隠れていた。でもあのヘアスタイルと雰囲気はボウイ!そしてU2がステージから降りてくる。

場面は、フレディ•マーキュリー(本名ファルーク•バルサラ)が、ロンドンのヒースロー空港でバゲージ係として働いていた時代に戻る。無名時代のシャイなフレディを演じるラミ•マレック、可愛い。この映画ではフレディの実家の光景が何度か出てきて、お父さんとお母さんとしゃべっているフレディを見て「おお〜」と感動。両親と一緒のフレディの写真は以前見たことあるが、両親とフレディが会話しているのを見るのは、新鮮。ゾロアスター教の家族であんな生真面目そうなお父さんだったら、自由奔放なフレディは暮らしづらかったと思う。

その後、Smileバンド時代のブライアン•メイとロジャー•テイラーとの出会いへ。運命の恋人メアリー•オースティンとも会い、ジョン•ディーコンもいきなり登場する。映画の展開に合うように、時間系列は、かなり端折って脚本してある。Queenのバンド結成のエピソードのアレコレを、ギュッと圧縮した感じ?

私は「いろんな複雑なエピソードを持つQueenのストーリーを、どうやって2時間の映画で再現できるのか?」と疑問に思ってたので、この「事実の再構築」は納得できる。でないと2時間では納まりきれん。

去年は、ヒゲ時代のフレディに扮したラミの画像だけが公開されてたので、ファンたちは、てっきり80年代のQueenの話が中心になるのかと思ってた。ところが、今年5月に公開された映画トレーラーで、ラミがキンキラキンのスパンコール衣装を着ていたので「おお〜!」と、ファンは一堂に仰天した。「70年代のフレディもやるの!?大丈夫?ラミさん」と。捨て身の演技だ。というのも、アメリカ人俳優は保守的で、映画出演する時に「体を露出しない」の契約書にサインさせる俳優もいるので、ラミさんも「レオタードなんて着ない」と言い出すかと思ったのだ。レオタード似合ってればいいが、もし失敗したら、何年も経ってから指さされて笑われるのがオチだ。俳優としてのキャリアに傷がつく。アメリカはホモフォービックな(男が女っぽい衣装を着るのを嘲笑する=ホモっぽい行為を嫌がる)国なのだ。

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ハーレクイン柄レオタードとかキンキラスパンコールとか、70年代のフレディ•マーキュリーの王道を行く衣装がいっぱい。しかもとっても似合ってる!誰も文句は言えないレベル。よくやった、ラミ!このレオタードを着こなした勇気だけでも、表彰モノ。

ラミ•マレックは両親がエジプト人で、アングロサクソンの白人ではない。ラミさんがフレディ役をやると聞いた時、アフリカのザンジバル島で生まれたフレディ•マーキュリーを演じるのは、最適だと思った。とはいえフレディとラミさんは、顔は似ていない。キリッとしたインド/イラン系のフレディと違って、従順な子犬のような顔をしたラミさん。目が大きすぎるので、長髪のラミはむしろ若い頃のミック•ジャガーに似ている。フレディの持つ妖艶な、棘のある薔薇のような妖しい感じはなく、もっと健全な感じ。

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フレディは人生後半で、酒池肉林パーティーとかハードコア•ゲイなクラブ周りとか、かなり派手に遊びまくるので、そんなフレディを、善良な雰囲気のラミさんが演じることで、毒々しさが軽減されて良かったと思う。ラミさんからにじみ出てくる、純朴なかわいらしさのあるフレディが印象に残った。

ラミはじめ、Queenメンバーを演じる俳優ももちろん上手い!ドラマーのロジャー演じるベン•ハーディは顔は似てないんだけど、存在感があった。ロジャーの気概が表現できていた。メンバー同士の会話が面白くって、シリアスな場面もウィットに富んでいて笑える。猫もてんこ盛りです。

この映画で「"あの"シーンは出てくるのか?」と、気になってた場面があった。フレディが、自分のセクシュアリティを、メアリーに告白する場面だ。何年も前に、メアリー•オースティン本人が語っていたインタビューを、読んだことがあった。フレディとメアリーの、お互いに嘘をつかない誠実な関係が、よく現れているエピソード。その場面は、ちゃんとあった!「言葉も、そのまま使われてる!」と感心した。その後のセリフは脚色だろうが、場面の雰囲気も、想像してた通り。この映画は、要所要所でポイント押さえてます。

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ラストのライブエイドのシーンは確かに濃かった!!最後の20分が凄いとは聞いていたが、私はライブエイドの演奏をYouTubeで100回以上見ていて、脳に焼き付いてたので、「再現なんてそんな大したことないんじゃないの?」とタカをくくっていた。ところが始まってみると、「どうしたんだ、ラミ!?」と言いたくなるような、気迫が凄かった。空手家が「気」で瓦を割るような、凄まじい気合いだった。

Queenのブライアン•メイ本人がインタビューで、「実物 (の僕たち) よりもいい!」と褒めていた意味が分かった。ライブエイド映像が、もっと立体的にいろんな角度から、3D的に見れる。おまけにラミさんが、本物のフレディと重なって見える。IMAXシアターで見たので、「あれ??フレディのホログラムと重なってるの?」と何度か思ってしまった。いや、気迫で演じるラミさんが本物のフレディに見えただけです。

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ただ、映画全体の場面構成が、もうちょっと一捻りあったらな〜と思った。ある事情で最初の監督が解雇されて、二人の映画監督が撮影を受け持ったので、それとは別に、全体を見通す映像スーパーバイザーみたいな人がいたらよかったかな?

あと5分間分、Queenとの友情のやりとりを増やして、悪役のポール•プレンターの場面を削って欲しかった。後半はポール•プレンターばかり出てきて、イラっとした。「こいつ、悪い奴やで!こいつが、フレディをそそのかして、魔の道へ追いやったんやで!」と強調したいのかなと思った。

とはいえ、各俳優の演技が素晴らしいので、俳優の演技、メイクアップ、衣装、プロダクションは完璧!シネマトグラフィー(映像) も秀逸!ただ全体的な構成にあと一捻り欲しいので、星4つ!映画に文句があるわけではなく、フレディ並みの完璧主義でいうと、「Queenは素晴らしいバンドなので、プレゼンテーションの仕方をもっと完璧にやれば、もっとうまく伝わるものがあるはず」という欲があるだけです。ちなみに私は、全く泣きませんでした。

ラミ•マレックの演技が素晴らしいので、アカデミー賞の主演男優賞のオスカーを獲るかもしれないと言われています。 俳優たちのインタビューを見たら、やはり、かなりの映像が削られているらしく、実質的には5時間分の映像を収録したのに、それを劇場用に2時間15分にカットしたらしいです。DVD発売時に、その秘蔵映像が見れるらしい。もうイギリスのQueenファンは映画見ちゃってるので、「DVDの発売はいつなの!?」と待ち構えているみたい。

 

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