パリとニューヨークで思考する

長年NYに暮らし、パリに住み、日本に戻ったアーティストの忘備録。

2019年の第91回アカデミー賞の個人的な感想

2月24日(日) の夜、第91回アカデミー賞授賞式がありました。2019年は波乱の年でした。

今年の賞レースは、SNSでの罵り合いが汚かった...。エゴの張り合いで、足を引っ張っていた。ヤンキーの戦い みたいだった。 

1月中は、レディガガとブラッドリー•クーパーに熱狂した信者が、『ボヘミアン•ラプソディ』を憎悪し、ラミ•マレック叩きが酷かった。また、派手な演出を好む人たちが、『ROMA ローマ』を酷評した。Hollywood Reporterによると、『アリー/スター誕生』と『女王陛下のお気に入り』を支持する人が、主演男優•女優賞に、ブラッドリー•クーパーとオリヴィア•コールマンを勝たせて、『女王陛下のお気に入り』に作品賞を取らせたいようだった。映画の支持者が、SNSで罵りを繰り返していた。

 

そんな状態で始まった、アカデミー授賞式。どうなることやら....と思ってました。

レッドカーペットでは、今年は素敵だと思うドレスがあまりなく、『クレイジー•リッチ!』のミシェル•ヨーの着ていたエリー•サーブのドレスが軽やかでよかった。

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photo: Red Carpet Fashion Awards

時間になると、いきなりQueenが登場!普通は「レディース&ジェントルメン、第91回オスカー授賞式です!」と、最初に女性の声でアナウンスがあるんだけど、アナウンス前にQueenが唐突に出てきた。

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アダム•ランバートは緊張せずに歌ってる!ブライアン•メイも、ギターの見せ場うまくできてる!最後はフレディ•マーキュリーの映像がアップで出てきて終了。これは、ブライアンが10年ぐらい前に、ブログでブツブツ書き綴っていた「いつか映画を制作してフレディの栄光を讃える!」という状況そのもの。

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ブライアン•メイって、天体物理学者になったし、イギリスでのキツネ狩りの法律を変えたみたいだし、長年の夢を実現する人だな、と思った。やはり以前、彼のブログで「僕は頑固で諦めないんだよ!」と書いてたけど、「石に齧りついても諦めない精神」が、大事なんですね。 

 

今年は司会者が不在なので、入れ替わり立ち替り、俳優たちが登場し、賞を発表していって忙しい。やはり、来年はちゃんとした司会者を用意した方がいい!

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個人的に一番好きだったジェイソン•モモアとヘレン•ミレンの強そうなコンビ


最初に助演男優•女優賞の発表があって、予想された通り、マハーシャラ•アリ『グリーン•ブック』と、レジーナ•キング『ビール•ストリートの恋人たち』が受賞。

『ブラック•パンサー』も、衣装デザインと美術賞を獲って、ここらへんまで、納得のいく感じだった。

面白かったのは、短編ドキュメンタリーで、『ピリオド 羽ばたく女性たち』 が受賞して、「生理についての映画がオスカーを取るなんて、信じられません!」と、興奮した女性監督が語ってたこと。生理は英語でピリオド。このグループ、可愛かった。

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photo via AFP

そして今年は、スパイク•リーの年。脚色賞は『ブラック•クランズマン』が受賞。スパイク•リーは、プリンスのシンボルのネックレスを下げて、紫色のスーツで登場。スピーチもよかった。

彼は、NYのブルックリンに住んでいて、私の家から歩いて15分の距離に、彼のスタジオがあるんです。何回か前を通ったことがあります。プリンスが亡くなった時に、ブルックリンのスパイク•リーのスタジオの前で、住民と一緒に、プリンスの曲をかけた夜通しのパーティーをやっていました。コミュニティ愛の強い人です。

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pic: Noel West for The New York Times

ブラッドリー•クーパーとレディガガのデュエット『シャロウ』は、演出がよかった。客席から直接ステージに上がって、歌い出した。粋な演出。

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撮影賞、外国語映画賞は『ROMA ローマ』のアルフォンソ•キュアロンが受賞。これも予想通り。

そして主演男優賞。ラミ•マレックが獲った!これで、賞レースのほぼ全ての主演賞を、ラミが獲ったことになる。ほっ。スピーチでは、ずっとラミを支えてきたルーシー•ボイントンのことを語って、愛が溢れていた。

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ボヘミアン•ラプソディ』は、解雇されたブライアン•シンガー監督の性的虐待疑惑のせいで、この映画を嫌悪する人が多く、そのとばっちりがラミの方へ来て、ここしばらく、ラミさんはネット上で中傷を受けてきた。レディガガの映画信奉者からの非難と、シンガー監督への憎しみで、映画を代表する存在であったラミさんは、攻撃されていたのだ。それが、こうしてオスカーを手にしたことで「オスカー俳優」になれて、格が上がって、誰も文句を言えなくなった。

ルーシーと二人で支え合ってきただろうし、このまま教会へ直行して、結婚してしまいなさい!と思った。

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pic: Matt Petit/A.M.P.A.S./Getty Images

 

そして次は、主演女優賞の発表。ここで 今夜のサプライズ が!!多くの人は、グレン•クローズが獲るだろうと予想してたが、なんとオリヴィア•コールマンが受賞!オリヴィア•コールマン本人は、受賞した瞬間、ショックで震えているみたいだった。

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ガーン!!グレン•クローズが獲れなかった...。

私はオリヴィア•コールマンが好きである。でも、別の映画で獲って欲しかった。

ここからちょっと長くなります。

映画レビューで、『女王陛下のお気に入り』を酷評したが、その理由は、あの作品が「女性蔑視」だと思ったから。#MeToo ムーブメントが叫ばれる中、こんな映画が評価されるとは信じられない。表向きには「3人の女優がバトルを繰り広げる、女性が主役」とされているが、実際は「男にとって都合のいいエロ話」だと思う。

美人の侍女たちが、女王の気を引こうと、レズビアン•ゲームに興じて、体を痛めつけたり、おっぱいポロンしたり、男性の目を悦ばせるサディスティックな物語が広がる。これを「ヒヒヒ....ヒヒヒ....いいぞもっとやれ!」と快楽的に一番楽しんでるのは、男性の観客ではないの?(もしくはレズビアン?)

オリヴィア•コールマンが演じてたのは、太って、人生に疲れ果てた、誇りや自尊心を失ってしまった性欲の強い女王。人々は「素晴らしい演技だ!」とか言っているが、そうだろうか?同じ状況を、男性の俳優が演じたら、オスカーを獲るだろうか?たいてい主演男優賞をとるのは、果敢に挑戦する男、不屈の精神の男を演じるような役じゃないの?

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この映画はフランスのサド小説『O嬢の物語』を彷彿させた。(『O嬢の物語』は、エリート階級の男が、女を性奴隷として調教して仕えさせる話。)こんな映画が歓迎される世の中では、男性を描くときは、果敢なヒーロー像を求めるのに、女性に対しては、「女は、裸になってそこらへんに転がってろ!」と、女性には卑屈でいてもらって、男の目の保養になるものを見せるよう強要する状況が続くと思う。女はその程度で十分だ、と。

そんな惨めな女の役が、主演女優賞として選ばれたのは、ショックだ。「卑下のかたまりの女」が、公式に承認された。ドナルド•トランプ政権の時代に、男尊女卑を象徴するような役が、評価されてしまった。

一方、オスカーを逃したグレン•クローズが演じたのは、長年、男を支えてきた「賢い妻」の役だった。(男性のアカデミー会員は、この映画を気に入らなかったかも。嫌われた?)賞を逃したことで、「縁の下の力持ち」として生きてきた女性像が、さらに陰に隠れてしまった。

これはよくない!

 

さらに悲劇は続く。最優秀作品賞は、『グリーン•ブック』が取った。

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黒人差別の映画なのに白人だらけの製作者たち

私は『ROMA ローマ』か、もしくは、保守に走ったなら『グリーン•ブック』が取るだろう、と予想してたので、驚かなかった。今年は、白人から見て安全だ (と思われる) 作品が取ったのでしょう。私はこの映画自体が、人種差別だと思いますが。

『グリーン•ブック』は、白人からは高く評価されているけど、黒人サイドからは、嫌がられていた映画です。

さっきまで上機嫌だったスパイク•リーが、腹を立てて、『グリーン•ブック』製作者が壇上に上がってスピーチしている間、怒って会場から出ようとしたが、結局、席に戻ったらしい。↓ 詳しくはこちら。

うーん...。何というか、『グリーン•ブック』の感想レビューにも書いた通り、男性上位主義、白人優位主義の状況が、明らかに出てしまった授賞式となった。スパイク•リーをはじめ、黒人の人たちは不快感を示しているし、私も、グレン•クローズのことでショックだった。

オスカー最多の4部門受賞した『ボヘミアン•ラプソディ』チームは喜んでいるようで、まあ、よかったわね、という感じですが、その他が、納得いかない。

こうして、トランプのような権力ある男が牛耳っていく世界は続く...。

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