パリとニューヨークで思考する

長年NYに暮らし、パリに住み、日本に戻ったアーティストの忘備録。

映画『COLD WAR あの歌、2つの心』をNYで見た感想レビュー

ポーランド人監督、パヴェウ•パヴリコフスキの映画『COLD WAR  あの歌、2つの心』をNYで見ました。2018年のフランス•カンヌ映画祭で、監督賞を受賞した作品です。アメリカのアカデミー賞でも、監督賞、撮影賞、外国語映画賞にノミネートされています。オリジナルの原題は『Cold War』で『冷戦』。

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第二次世界大戦後、ポーランドの音楽芸能者を育てる学校に、歌手として入ったズーラは、音楽監督のヴィクトルと出会う。生徒はポーランドの民族舞踊や民族合唱を習得し、講演会で発表する。間も無く、ズーラとヴィクトルは恋に落ちる。

その後、西洋諸国との冷戦が始まり、講演の演目も、スターリンレーニンを讃える、共産主義プロパガンダ的なものになる。ヴィクトルはパリへ逃亡し、数年後には、ズーラもパリへやって来る。

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男と女が、惚れた腫れたで喧嘩したり、酒をあおったり、殴ったり...がグルグル続く話。酒、ケンカ、煙草、酒、裏切り...。なぜかトイレで酒をあおるシーンや、トイレで情事を重ねるシーンが続く。トイレの床にベッタリと座り、絶望的に見つめ合い、この世の終わり的なセリフを吐く二人。

知らんがな...。

すいません、私はこの設定に「キャー素敵...!」となれず、あまり感情移入できませんでした。特に、ズーラの性格が好きになれなかったので、何とも言えない...。ヴィクトルの仕事仲間と寝て、あの男と一晩で6回もヤッたとか、氷のように冷たい顔して毒を吐いたら、そりゃ殴られるよ。

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この子は、身勝手で天真爛漫で、魅力があって歌の上手い、男を振り回す、ファム•ファタルなのです。そして、才能あふれる音楽家のヴィクトルが、彼女と恋に落ちたことによって、運命が狂っていく。アルコール依存症のように、ズブズブと虜になっていく。恋の病なので、どうしようもない。

ズーラという娘は、一部の男の心の中に存在する、「こんな女に翻弄されて、人生をズタズタにされたい。鼻っ柱が強く負けず嫌いで、すべすべの肌を持った美しい女から、弄ばれ、嫉妬心に苛まれて、いたたまれなくされたい」というような願望を、具現化した存在なのではないか?と思う。

そんなわけで、主人公の色恋沙汰には全く興味がなかったけど、パリのジャズクラブの撮影が、とろけるほど美しかった!!映画史上でも印象に残る美しさ!大人のしっとりしたアンニュイな空気感が満載です。

↓ パリの映像はこちら。

 

二人は、せっかくフランスへ来ても、喧嘩ばかり。どこへ行っても、嫉妬、情欲の嵐で、満足することがない。ズルズルと泥沼にはまっていき、冷たく突き放す。モノクロのスクリーンから、退廃感が漂い、最後は、「この世に希望を持てなくなった、男と女の物語」として、映画は終わる。監督の両親からインスパイヤされた話だというが、ご両親はうまくいっていたのだろうか?

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東西分離と共産主義という政治的背景を踏まえて、虚無感と気だるい感じが全体に満ちていて、「運命の恋人とともに、人生の奈落に落ちたい欲望」を、シックなモノトーンで、冷たくスタイリッシュに表現した映画なのだと感じました。

耽美な映像としては、アルフォンソ•キュアロンの『ROMA/ローマ』より、審美的には優れていると思う。耽美とか退廃的な空気感は、カメラを回せば撮れるものではないので、監督の手腕でしょう。しかし主人公には全く賛同できなかった...。

映画を通して、ポーランド民謡のような歌の合唱が続くので、民族音楽も美しいです。ちょっとブルガリアン•ヴォイスのよう。

 

この映画を見た後で、「私は、この手のウットリ系色恋映画は好きじゃないのかな?」と考えたが、「いいやっ!!」と思い直した。香港出身ウォン•カーウァイの『In the Mood for Love  花様年華』は、不毛の色恋映画の中でも、最高峰である。もっと優しくて、切ない。『COLD WAR  あの歌、2つの心』の方は、冷たく突き放すようにシックなのだ。男性的なのだと思う。この映画を見て、この手の色恋映画をもっと見たいと思った方は、ウォン•カーウァイの『花様年華』もオススメです!

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