パリとニューヨークで思考する

長年NYに暮らし、パリに住み、日本に戻ったアーティストの忘備録。

Netflixドラマ『エミリー、パリへ行く』のツッコミ感想レビュー

10月、Netflixの米国ドラマ『Emily in Paris (エミリー、パリへ行く)』が放映され、フランスでは、放映された週に視聴ナンバーワンの人気になってました。

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主演はリリー•コリンズ。英国のミュージシャン、フィル•コリンズの娘。ドラマの設定は、米国シカゴのマーケティング会社に務めるエミリーが、ボスの代わりに1年間パリのオフィスで働く、という「パリのアメリカ人」を描いたラブ•コメディです。『セックス&ザ•シティ』を手がけた、米国のダレン•スターが製作しています。

華麗なパーティー、大御所ファッション•デザイナーの顧客、有名ホテルの御曹司との仕事など、豪華で浮世離れしたドラマ内容は、賛否両論です。さすが、リーマン•ショック前に人気を博した『セックス&ザ•シティ』の製作者だけはある。

雑誌をめくる感覚で見てる分には良かったけど、「これはダメだろ!」と思うような、紛らわしい描写だらけ。ドラマは虚構なものだけど、あまりにも現実味がなかった。

このドラマを見てパリに憧れるのは、たいへん危険なので、何が良くないのかを分析していきます。

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まず、エミリーが「シカゴ出身」の設定に無理があった。エミリーはいつも鮮やかな服を着ていて、服がアートすぎる。NY生まれならまだしも、一般の米国人のファッション感はメチャクチャ保守的で、特に地方都市の女性は、尖った感覚の服のセンスはないです。

エミリー、どこの子やねん!

と思いながら見てました。

ボーイフレンドも、かなり違和感あった。大体、スポーツ•バーに通っているタイプの男性の彼女というのは、野球帽を被ってたり、野球のジャージ着てたりして、「顔は可愛いけどファッション的にはダサめの金髪美女」とかが多いです。

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エミリーのような、鮮やかなピンクのドレスに、淡いピンクのコートを着るようなお洒落な女性は、スポーツ•バーには行かないですね。ゲイの友達と現代美術館とか行きますね。

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全然、シカゴっぽくない

パリに着いたら着いたで、「おや?」と眉をひそめる描写がたくさん。

まず、パリの街中の描写に、アフリカ移民がいない。私の体感では現在のパリでは、15人に一人ぐらいの割合で、アフリカ移民がいます。ドラマの中には、アラブ系ムスリム移民も、アフリカ黒人も、ほとんど出てこない。職場にいる黒人は、フランス人。このドラマでは、白人ばかりが出てきます。

いつの時代のパリだよ!

と、心の中で突っ込んでいました。

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パリでカバンを大開きにしてはイカン!

エミリーが、初めて食べたパン•オー•ショコラ(チョコレート•パン) に感動して、Instagram用に写真を撮っているシーンも驚いた。夢中になってカバンを大開きにしてるんだけど、パリの街中でこんなことしてたら、数分で財布を盗まれます。

職場へ行く前に、米国大使館や警察へ行くことになって、仕事どころじゃなくなるよ。

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泥棒さん、いらっしゃい

通りのカフェでも、テーブルの上にバッグを無造作に置いていて、夢中で喋ってます。バッグごと盗られて、パスポートも全部消えるよ。奥まった席ならまだしも、通りの席はホームレスがお金を無心して来るし、現実的ではないです。

パリでやってはいけないお手本!

と、ツッコミどころが満載です。

またエミリーが、いつも足を露出して派手な格好をしているのも、「大丈夫か?」と気になりました。

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2年前のパリで、通りでナンパしてきた男を非難したところ、男に激しくブン殴られた女性がいて、ニュースになりました。この女性は真っ赤なドレスを着て、フッカー(売春婦) のようでした。昼間っから足を露出するような格好をしていると、こんな男に狙われます。

↓ 見知らぬ男に殴られるフランス女性のビデオ映像。

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photo via Marie Laguerre / Facebook

パリジェンヌは、秋になると体を覆う服を着て、露出が少ないです。わりとベージュ系とか柿色のような、土っぽい渋い色のコーディネイトが多い。パリは浮浪者が多いしスリも多いし、あまり過度に目立つ服を着ていると、性的にも金銭的にも狙われます。

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ドラマの中で薔薇の花束が異様に安い

また、エミリーの周りのフランス人が、魔法のように英語をペラペラと喋っているのは、ありえないです。観光客、もしくは在住アメリカ人が来るようなお店では、店員も英語を話すので、パリで英語で話しても大丈夫だ、と思うかもしれません。

でも結局、フランス人はフランス語が大好きで、英語を話したくない人もたくさんいます。ドラマで同僚が「フランス語も話せないのにパリで働こうとするなんて、君は傲慢だ」とエミリーに言うシーンがあり、現実はそれです。

さらにドラマの中で、エミリーが薔薇の花束を買うとなぜか6€だけど、実際は、パリで花束は40€ぐらいします。綺麗なものは高いです。

君は夢でも見てるのか?というような、非現実的な描写が多いです。

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このドラマはフランスで、「フランス人が冷たく描かれている」と話題になったようです。私が1年間パリに住んだ感想は、フランス人は優しいです。アメリカ人こそ、横柄で気が強くて主張が強いぞ!だから、「冷たいフランス人」の描写は誇張されていて、正しくないですね。フランス人優しいですよ。

逆に、「これはパリらしいな」と思った場面もありました。

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エミリーが参加する企画の、化粧品会社のCEO女性の雰囲気や服装が、すごくフランスっぽく、アメリカには存在しないです。アシスタントのゲイ男性の風貌も、アメリカにはいないタイプ。CEO役の女優さんはイギリス人だけど、この中性的でクールな感じは、ヨーロッパ独特なのかな?英国の作家ヴァージニア•ウルフみたいでカッコいい。

ヨーロッパっぽいというのは、ペドロ•アルモドバルの映画の雰囲気や、ジャン•ポール•ゴルチエみたいな世界。アート色が濃く、強い色彩の世界ね。

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また、エミリーが最初に付き合うフランス人•トマが、顔つきやヘアスタイルが、すごくフランス人ぽかった。こういう風貌の人はパリによくいる。アメリカの場合、五分刈りにしている白人男性は意外といないです。禿げている人は大勢いる。

あと、エミリーの同僚のリュックが、すごくフランス人ぽいです。見た目は変わっているけど、正直に意見を言うし、隠さないでエロ話をするし、こっそり本音で話すし、フランス人ぽいなと思う。私はパリに来て2ヶ月目で、「フランスの白人男性って『ムーミン』のヘムレンさんみたいな雰囲気の人いるな」と思ってたけど、私の中の『フランス人おじさん=ヘムレンさん似』説は、リュックで立証されます。この人も、アメリカでは全く見ないタイプ。

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(左) リュック、(右)『ムーミン』のヘムレンさん

『エミリー、パリへ行く』のパリの描写は、穴だらけの表現が多いけど、アメリカ人女性のお馬鹿セックス•コメディとしては、面白いです。パリの描写を信用せずに、『セックス&ザ•シティ  パリ版』として、笑い飛ばす感覚で見ると楽しいでしょう。  

 

10月の半ば、『エミリー、パリへ行く』の撮影が行われた場所へ行ってみました。パリ5区のソルボンヌ大学の周辺です。

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エミリーが住んでいる設定のアパートからは、お年寄りが犬の散歩に出てきて、普通のアパートだった。意外にも質素な感じのエリアでした。『エミリー、パリへ行く』が人気なので、ゲイのカップルが来て写真を撮ってました。

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パン屋やレストラン、友人ミンディと会話するカフェは、全て同じ一角 Place de l'Estrapade に揃ってました。

近くには、リュクサンブール公園があります。

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ロックダウン前の静かなひと時。次の週にロックダウンが発令され、美しい秋のパリは終わってしまいました。

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