パリとニューヨークで思考する

長年NYに暮らし、パリに住み、日本に戻ったアーティストの忘備録。

映画『永遠の門 ゴッホの見た未来』をNYで見た感想レビュー

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ウィレム•デフォーが画家ゴッホを演じた映画、『At Eternity's Gate (永遠の門  ゴッホの見た未来)』を、NYで見てきました。画家で映画監督のジュリアン•シュナーベルの作品。私はゴッホ関連の映画を見るのはこれで3本目。ティム•ロス主演の映画と、2017年の『ゴッホ〜最期の手紙〜』を見たことがある。ちなみに彼の名前は、英語では Van Gogh "ヴァン•ゴー" と発音します。

この映画は「ゴッホの人生を語る」というよりは「彼の視点から、世界がどう見えたか」を表現した映画。前半はあまりセリフがなく、フランスのアルルの風景の中を、画材一式を背負ったヴィンセントが、草をかき分けたり土の感触を味わったりしながら、光の中を嬉しそうに歩き回るシーンが多い。

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コンテンポラリーなピアノ演奏が重なっているので、何度かカクッと一瞬眠ってしまった。「何だろう?コンセプトはヒーリング映画だろうか?」と思ったけど、ゴッホの感覚では、自然の美しさを子供のように無邪気に堪能するのが、自分にとっての "癒し" だったのではないかな。

すごく「感覚」で表現している。光の感覚、風の感覚。シュナーベルの2007年の作品『The Diving Bell and the Butterfly  潜伏服は蝶の夢を見る』を思い出した。「ああ〜、あの映画もすごく感覚的だったなあー」と映像を見ながら思った。

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オスカー•アイザックがポール•ゴーギャン

映画の中盤から、病院への入退院、ポール•ゴーギャンとの交流、献身的な弟テオとのやりとりを通して、人間ドラマが起こってくる。ゴッホの最大の敵は、人間社会だった。この絵はうまくない、この絵は良くない、この画家は ”いい絵” を描かない、あの男はキチガイだ、と、人間社会はゴッホにレッテルを貼って非難し、警察に通報し、精神病院へ送り込んだ。

ゴッホ本人は「神が僕を画家にした」と信じているが、人間社会は、それを突っぱねた。神父さんまでが認めなかった。彼の画風が前例のないものだったから。監督のジュリアン•シュナーベル自身も画家で、認められるまで時間がかかったらしいから、人の可能性をぶち壊すような ”世間の冷たい目” を、当事者の感覚でそのまま描いたのかな?

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映画を一言でいうと、厳しい。変わり者の画家を取り巻く環境を、一切美化せず、美的に取り繕うこともなく描いているので、見ているのがキツい映画だった。ゴッホを、数々の苦難を乗り越えた聖人のように描いている。画家で監督のジュリアン•シュナーベルは、観客に迎合する気などないらしい。でも、非常に深いテーマを描いている。ホームレスや弱者に対する、現代の市民の態度とも重なる:無関心、無神経な態度、差別意識

彼が最後に仲良くなる医師を、フランス俳優マチュー•アマルリックが演じていて、彼が登場するシーンだけ和んでいて、ホッとした。人を和ませるコミカルな雰囲気を持つ俳優は貴重です。

↓『At Eternity's Gate (永遠の門 ゴッホの見た未来)』

 

画家のたどった厳しい人生を、ピアノの音楽と、アルルの光溢れる自然と共に、淡々と描いた映画。苦渋を味わった聖人画家の寓話のようだ。オスカー•アイザック、マッツ•ミケルセン、ルパート•フレンドと、共演の俳優も強者。絵を描いている人、もしくはゴッホの絵のファンで、彼の最後の数年間について知りたい、という人にオススメな映画。それ以外の人だとキツイでしょう。

もし、彼の絵を堪能したいのなら、2017年のアニメーション『ゴッホ〜最期の手紙〜』がオススメです!絵の世界に入り込んでいくような感覚を得られます。

↓ 映画 『Loving Vincent  ゴッホ〜最期の手紙〜』

 

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