パリとニューヨークで思考する

長年NYに暮らし、パリに住み、日本に戻ったアーティストの忘備録。

デヴィッド•ボウイの映画『スターダスト』の感想レビュー

数年前から話題になっていた、若き日のデヴィッド•ボウイをテーマにした映画『スターダスト』を見に行って来ました。

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© IFC Films/Elevation Pictures

この映画、製作が始まる前から、ボウイの息子のダンカン•ジョーンズが「映画の中で父の曲は一切流させない!」と主張して拒否されてたので、心配してました。デビッド•ボウイの曲が流れないボウイの伝記映画?どうなるの?と思ってたけど、なんとか完成したらしい。

 

主演は、数年前からインディー映画で活躍しているジョニー•フリン。ボウイのような痩せたカマキリのような顔じゃないので、顔つきは違う。でも彼もミュージシャンなので、歌が歌える雰囲気ある俳優を使ったのでしょう。

まだ長髪時代のボウイの物語。『ジギー•スターダスト』のペルソナを作り上げる前の、1971年に米国ツアーを行うボウイの、淡々としたロードムービーアメリカでボウイの世話をするレコード会社のロンが、いかにも米国ユダヤ人という雰囲気で、懐かしかった。

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© IFC Films/Elevation Pictures

一般的なデビッド•ボウイのイメージとは違い、自分の方向性がはっきりしなくて怯えてグダグダな人物が主役となっている。そのため、「何だよ、この映画。俺のヒーローのボウイはどこだ!?」と、映画を見てイライラする人も出てくるかも。

この映画を、『ボヘミアン•ラプソディ』のようなハリウッド興行映画と比較してはいけない。全然違います。むしろ、画家のゴッホの映画『永遠の門 ゴッホの見た未来』を思い出した。あの映画も、フラフラと悩み彷徨うゴッホを描いていた。天才も悩むのだ。

 

監督は英国のガブリエル•レンジ。アメリカ人が歪んだボウイ像を描いたら問題だけど、英国人が製作した英国スターの映画なので、まあいいのでは?と思う。

デビッド•ボウイのお兄さんが、精神を患って鉄道に横たわって自殺した、という事実は知っていた。精神を患っているお兄さんとボウイとの関係が、この映画の話の軸となっている。なので、物語も暗い。

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photo: Paul Van Carter

ボウイとお兄さんテリーとの関係、精神病院での医者との会話が、たくさん出てくる。華やかなステージ上のボウイを期待して映画を見に来た人は、ガッカリするでしょう。ボウイのお母さんの家系が、精神異常者を何人も生み出している事実は知らなかった。実際にボウイの伯母さんは、頭がおかしくなってロボトミー手術を受けたらしい。

身近な親戚がキチガイになっている事実は、これからキラキラ世界へ羽ばたこうとしている才能あるミュージシャンにとって、恐怖以外の何物でもない。

自分に音楽を教えてくれた兄が狂っていくのを見て、自分も兄のようになってしまうのではないか?自分の狂気のDNAも発芽するのではないか?と怯えるボウイが描かれる。

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© IFC Films/Elevation Pictures

ボウイがNYに行ってアンディ•ウォーホルのスタジオを訪れた事実は知っていて、写真も見たことあったけど、ウォーホルからいい扱いを受けなかったとは、知らなかった。英国人がアメリカで売り出すのは、難しいねえ。

主演のジョニー•フリンも、キャラクターの強い毒のある俳優ではないため、フラフラしてどっちつかずの芯のないデビッド•ボウイが描かれている。何をやりたいのか、どっちの方向へ行きたいのか、方向性のはっきりしない物語が、淡々と流れていく。

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© IFC Films/Elevation Pictures

最後にロンドンへ帰ったボウイが、やっとアーティストらしさを発揮して、アイデアを練って、『ジギー•スターダスト』のキャラクターを作りあげていくので、そこだけは、ホッとした。

ジョニー•フリンが柔らかい優男系で、フワフワしすぎなので、もっとパキッとした勢いのある俳優が演じてもよかったと思うけど、今、カリスマ性のあるアーティスト俳優も少ないし、難しいねえ。

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© Films/Elevation Pictures

決して華やかな映画ではありません。ボウイを知る音楽ファンにとっては、アーティストとして成功したいと渇望する、初期ボウイの葛藤を知るには、興味深い映画でしょう。逆に、ロック音楽もデビッド•ボウイもろくに知らない人が見に行っても、ただの暗い映画でしょう。

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